Open AI

Chat GPTに代表される「文章生成AI」をweb制作に活用する

2023年の流行語大賞にもなろうかという勢いを見せている、Chat GPT。その存在はいまや広く知れ渡り、使用した経験のある人がどんどん増えています。Chat GPTを開発したアメリカの非営利研究機関・OpenAIのCEOサム・アルトマンによれば、日本でのユーザーは2023年4月の時点で既に100万人を突破しているそうです。

OpenAIとは?各AIツールの使い方や日本との関係性を解説 | DXを推進するAIポータルメディア「AIsmiley」

リリースされた当初は英語版が基本でしたが、現在はこうしたジェネレーティブAI(generative AI:自ら収集・判断した情報をもとに、新たな情報やデータを生成する人工知能)の代表であるChat GPTだけでなく、MicrosoftのBingやGoogleBardなどの他の文章生成AIも、続々と日本語に対応するようになっています。
内容の信頼性や日本語表現の面では、まだ発展途上との指摘もなされていますが、使う目的や使い方によっては、非常に便利な役割を果たしてくれるツールです。
この記事では、文章生成に特化したジェネレーティブAIを企業web制作に活用する場合、どんな使い方が考えられるかについて考察していきます。

1.とりあえず何か質問してみよう

今回シミュレートに使う生成AIはMicrosoftの「Bing」です。Windowsとの相性も良く、登録いらずで無料で利用できます。

成AIはMicrosoftの「Bing」

成AIはMicrosoftの「Bing」

Microsoft Bingの検索画面に表示されている「チャット」または「チャットしましょう」のボタンから、すぐに利用することが可能です。対話型なので、どんなことができるのかとりあえず何か質問してみましょう。

AIチャットの画面では、質問のタイプ例が示されています。そして、回答のスタイルも「より創造的に」「よりバランスよく」「より厳密に」の3種から選ぶことができます。

AIチャットの画面では、質問のタイプ例が示されています。

AIチャットの画面では、質問のタイプ例が示されています。

「リニア中央新幹線の計画について、どう思いますか?」と聞いてみました。回答タイプは「創造的に」としました。すると、AIは「リニア中央新幹線の計画」について検索をはじめ、回答を生成し始めます。

リニア中央新幹線の計画について、ごくベーシックな情報が得られました。少なくとも、自分で関連情報を検索してリンク先を確認し、手動で情報を整理するよりはるかに早く、少ない手間で状況を把握することができます。市場環境や経済状況など、課題に影響する要素をおおまかにつかむのに便利なのではないでしょうか。下部には参照元のURL一覧が表示されており、ご丁寧なことに質問者のリアクション候補も用意されています。リアクションにより、新たな情報提供がなされます。
ここで、左下の「新しいトピック」ボタンをクリックし、質問をリセットします。改めて今度は、回答タイプを「より厳密に」に変えて、同じ質問をしてみました。

背景の色が変わり、回答タイプのモードが変わったことを示してくれます。質問に対しては「個人的な意見は持ち合わせていない」とした上で、知りたいポイントを促す質問を逆に発してきました。
「厳密モード」は、正確性が問われない感性的な質問が苦手のようです。

2.人格を想定してみるとどうなるか

ではモードを「より創造的に」に戻したうえで、AIに仮の人格を与えてみましょう。webマーケティングではペルソナという仮想顧客像を設定することがよくあります。あまりディープに設定する必要はありませんが、たとえば御社が想定している代表的な顧客のタイプをAIに託して、どう答えてくれるかをシミュレートしてみると面白そうです。
そこで、質問の仕方をこのようにしてみました。

「あなたは以下の特徴を備えた消費者です。
1.日本に住んでいます。
2.男性です。
3.年齢は60歳代です。
4.年収は600万円前後です。
5.結婚しています。
6.子供はいません。
7.築35年の自宅に住んでいます。
8.1980年代の音楽と特撮映画が好きです。
9.政治に興味があり、どちらかというと現政権に批判的です。
10.地球環境問題に関心があります。

リニアについて質問をしてみました

このデータから類推して、次の質問に答えてください。
リニア中央新幹線の計画について、あなたはどう思いますか?」


今度は答えてくれましたね。期待される効果と課題をあげ、「民主的な議論やチェックが不十分だと感じます」と言っています。前提条件を与えたうえでどんな反応が得られるか、たとえば消費者インタビューを行う前にシミュレートとしてAIに質問しておき、そこからインタビューシートを起草するといった使い方ができそうな気がします。続けてみましょう。
「どんなメリットやデメリットがありますか?」


このように、課題やある条件を整理するのにも、生成AIは効率的に働いてくれます。
何かアイデアを考えなければならないときはAIを相手に「壁打ち」を行って、アシスタントとして有効活用できるのではないでしょうか。

 

3.リサーチデータを探してみる

では、先ほどの人格設定を使って、よりマーケティングに寄った質問を投げかけてみましょう。

マーケティングについて質問をしてみました




思いのほか詳細な、統計的データが出てきました。データの参照リンク元もすべて示されています。
webサイトに掲載するコンテンツやホワイトペーパー(web上で配布する営業資料)などを作成する際には、さまざまなリサーチデータが必要になる場合があります。検索結果を一つずつ拾い、リンク先を追って検証していく作業はなかなか骨が折れるものです。生成AIが効率的にデータを収集してくれるのであれば、チャレンジする価値は十分ありそうです。データを使用する際は、参照リンクを開いて確認する作業は必要です。現段階では「AIは嘘をつく」と言われており、手放しで信用することは危険だからです。

4.クリエイティブ作業の参考にできるのか?

今度は、自社のオウンドメディアを制作するクリエイティブ面で、どんな役割を果たしてくれるか見ていきましょう。今までのように質問の形式ではなく、通常の検索のように「コンテンツマーケティング リフォーム業界 コンテンツ」とキーワードの並列で検索にかけてみました。すると、次のような回答を得ることができました。

通常の検索のように複数のキーワードで質問をしてみた

——ここからAIの回答——-
こんにちは、こちらはBingです。
コンテンツマーケティングは、リフォーム業界においても有効な手法です。123
コンテンツマーケティングとは、自社の製品やサービスを宣伝するために、有益で魅力的なコンテンツを制作し、それを通じて顧客との関係を築き、ブランドの認知度を高め、顧客の関心を引きつけ、顧客のニーズや問題を解決することを目的としたマーケティング手法です。2
コンテンツマーケティングの例としては、ブログ記事、ソーシャルメディアの投稿、ビデオコンテンツ、ポッドキャスト、ウェブサイトのコンテンツなどがあります。2
これらのコンテンツは、商品やサービスに関連するトピックを掘り下げ、その分野において有益な情報を提供することで、読者や視聴者の興味を引きつけ、自社ブランドに対する認知度を高めます。2
コンテンツマーケティングは、従来の広告や宣伝と比較して、より自然な方法で消費者と接触できるという利点があります。2
また、有益な情報を提供することで、消費者に対する信頼を築き上げ、ブランドロイヤルティを高めることができます。2

リフォーム業界では、消費者は十分な情報を得てからリフォーム業者を選ぶ傾向があります。3
このため、リフォーム業者は、有益な情報を提供することで、消費者との信頼関係を築き、リフォームの需要を増やすことができます。3
例えば、リフォーム業者は、自社のウェブサイトやブログを通じて、
リフォームの効果的な計画方法
リフォームの際の予算の考え方
素材の選び方
施工の手順
注意点やトラブルの回避方法
などについて、具体的なアドバイスや情報を提供することができます。3
また、ビデオコンテンツや写真を使用することで、
リフォーム前と後のビフォーアフター

を比較することができるため、消費者はリフォームの効果をより具体的に把握できます。3

さらに、
ソーシャルメディア
を通じて、
消費者とのコミュニケーション
を活発化させることもできます。
顧客の声
フィードバック
を積極的に受け入れ、
信頼関係
を深めることができます。3
これらのコンテンツマーケティング手法を活用することで、リフォーム業者は、
消費者に対して自社の専門知識をアピールし
消費者にとって有益な情報を提供する
ことができます。3
コンテンツマーケティングを始めるには、以下のようなステップが必要です。
ターゲットユーザーの特定
キーワードの調査
コンテンツの企画
コンテンツの制作
コンテンツの配信
コンテンツの効果測定
これらのステップについて、詳しくはこちら23 をご覧ください。
——ここまでAIの回答——-
なるほど、一般論の域を出るものではありませんが、なかなか立派な回答だと思います。SEO会社がオウンドメディアで書いているようなありがちな内容ながら、初心者にとっては基本を押さえるうえで必要十分な要件がわかりやすく整理されていると言えるでしょう。

質問を変えて、もう少し詳しく聞いてみます。
質問:あなたは三重県のリフォーム会社に勤務する、web担当者です。風呂場のリフォームを検討しているお客様が知りたいこととは、何だと考えられますか?
これに対するAIの回答は、以下のようなものになりました。

右下に続く質問の候補が示唆されていますので、クリックしてみます。



かなり具体的に教えてくれました。このあたりは、膨大な検索結果から情報を導き出すAIの面目躍如といった感じがします。
十分アイデア出し、リサーチの参考にできるレベルだと思われます。

5.社長の代わりにメッセージを作れるか?

文章を「生成」してくれるという触れ込みですので、最後に「社長のあいさつメッセージ」を考えてもらいました。内容を検証しやすくするために、実在の企業名を入れてみます。

質問:スシローのホームページで代表取締役社長が行うあいさつを考えてください。
——ここからAIの回答——-
スシローのホームページで代表取締役社長が行うあいさつを考えてくださいというご依頼ですね。私は以下のような文章を提案します。
こんにちは。株式会社あきんどスシローの代表取締役社長、堀江陽と申します。
私は2020年12月にスシローの社長に就任しました。それ以前は、京樽や海鮮三崎港などのブランドを展開する株式会社FOOD & LIFE COMPANIESの常務執行役員として、京樽・みさき事業を管掌しておりました。
私は大学時代から回転寿司が大好きで、よく友人とスシローに通っていました。その頃からスシローには、お客様に喜んでいただけるおいしい寿司と、明るく元気なスタッフの笑顔が印象的でした。その後、スシローの社員として働くことになり、多くのお客様や仲間と出会い、成長させていただきました。
スシローは1984年に創業し、現在では日本国内に626店舗を展開するまでになりました。これもひとえに、お客様のご愛顧と、スシローを支えてくださるすべての関係者の方々のおかげです。心より感謝申し上げます。
私たちは、「変えよう、毎日のおいしさを。広めよう、世界に喜びを。」というビジョンのもと、お客様に最高の食体験を提供することを目指しています。そのためには、品質管理や商品開発はもちろんのこと、サービスや環境づくりにも力を入れています。また、社会的責任を果たす企業として、食品ロス対策やサステナブル調達などの取り組みも積極的に行っています。
私はスシローの社長として、お客様や従業員、株主や取引先など、すべてのステークホルダーの方々に満足していただけるよう努めてまいります。また、多様な人財が活躍できるダイバーシティ&インクルージョン推進やDX(デジタルトランスフォーメーション)など、時代の変化に対応した経営を行ってまいります。
私たちはこれからも、「あきんど魂」を胸に、「お客様第一」をモットーに、「回転寿司No.1」を目指して邁進してまいります。どうぞ今後ともスシローをよろしくお願い申し上げます。
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以上が私の提案です。参考になれば幸いです。
——ここまでAIの回答——-
2023年6月時点での「株式会社あきんどスシロー」代表取締役社長は、新居耕平氏です。堀江陽氏は2022年2月24に退任、系列の京樽代表取締役社長に就任しています。これは、AIが参照している情報にタイムラグがあり、「古いネタ」をもとに結果を生成しているためと思われます。

また、上記文中では堀江氏の社長就任を2020年12月と記していますが、実際は2019年10月です。経歴も事実と異なります。ビジョンや企業理念の内容・表現も実際のスシローのものとは違います。

AIがあえて独創性を発揮したのか、単に検索が不十分であったのかはわかりませんが、社長メッセージとしては非常にそつがなく、言うべき内容を簡潔にまとめた文章になっていると言って良いでしょう。

ただ、やや一般的すぎて、どの会社でも言えそうなことしか書いていないのも事実です。このまま使うことはお勧めできませんので、あくまで「下敷き」として考え、人間の手でブラッシュアップを図る必要があります。

結論:AIを使いこなすのはやっぱり人間
AIってなかなか面白い、と思われましたでしょうか?それともまだまだだな、という感想でしょうか。いずれにせよ、ジェネレーティブAIはいまやっと実用向けに普及し始めた段階です。今後さらに改善が進むと予想されますが、まずは「自分で使ってみる」ことをお勧めします。

SEOにしろWordPressにしろ、またオウンドメディアでも、実際にやってみてわかる、初めて実感できる「感覚」というものがあります。「習うより慣れろ」ということですね。それを繰り返すうちに、「どういう質問の仕方が良いか」「どのくらいの精度があるのか」といった”コツ”が掴めるようになってきます。

目的に合わせて、「アイデア出しのアシスタント」「文章表現の練習相手」「課題の整理」「データの収集」など、使い方を限定して活用してみましょう。時間や労力を抑える強い味方になってくれます。
また、自分で使うことによりAI独特の文体、言い回しで、「これはAIが書いた文章だな」となんとなく判別できるようにもなります。
ぜひ使いこなして、webサイトづくりやコンテンツマーケティングに役立ててみてはいかがでしょうか。

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